29歳、処女。
LESSON 4
LESSON 4

Test







それからも喜多嶋さんの特別レッスンは続いた。


仕事終わりに唐突に食事に誘われたり、休みの日に急に呼び出されたり。

と言っても、何かを教えてもらうというよりは、一緒にご飯を食べたりお酒を飲んだりするだけなんだけど。



「もう、いつも呼び出しが急すぎますよ」



会社から駅ひとつ分離れたところにある大衆居酒屋で、私は向かいに座った喜多嶋さんに文句を言ってみる。



「抜き打ちテストだよ」



喜多嶋さんは悪びれもせずに砂肝を噛みながら言った。



「テストって、何のですか」


「俺の言いつけをちゃんと守ってるか、定期的に確認しないとな」



喜多嶋さんがにやりと笑って顔を少し近づけてくる。


どきりとして思わず肩が震えた。



「………で、テストの結果は?」



自分の心臓の音がうるさかったけど、なんでもないふうを必死に装って、そう訊ね返した。


喜多嶋さんはにんまりと笑って、



「ま、70点てとこかな」


「ええ? 70って………中途半端な。髪も服も、けっこう頑張ってるつもりなんですけど」



喜多嶋さんの顔が近すぎるので、少し上半身を反らしながら答えた。



「たしかに髪と服は前よりだいぶ良い。が、まだなんか固いんだよな」


「固い、ですか」


「ああ、固い」


「………これ以上どこをどうすれば」


「そうだなあ………」



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