世界が止まる1分間
「無駄にしないで。時間も、気持ちも」


僕は拳をぎゅっと握ると走り出した。


たぶん、きっと。

僕らは世界を救えないし、ヒーローになんてなれない。

たかが高校生の僕らにできることなんて限られていて、ことさら僕には少ないだろう。

さらにいえば、今この瞬間、僕と花音にはひとつのことしかなかった。


好きなひとに好きだということ、それだけが僕らにとって全てだった。


だからこそ走って追いかけた。

後ろ姿を見つけて名前を叫ぶと、雪奈さんは驚いたようにこちらを振り返った。


「どうしたの?」


息が切れて呼吸が苦しい。


「僕、雪奈さんに言いたいことがあって」


見つめ合いながら呼吸を整えるそのわずか1分だけは、世界が止まっているような気さえした。

僕は大きく息を吸い込むとこう言った。



「雪奈さんが好きです」



声は夕焼けの空に響き渡った。

静寂が訪れた空気は鈴の音が壊した。


「ごめんなさい」


小さな声だった。
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