世界が止まる1分間
「どうしたのよ、伊月。いつになく暗い顔をして」

花音が話しかける。

花音なら信じてくれるだろうか。雪奈さんと一緒に帰ったあの日が繰り返されていることを。

花音なら、そう思うけど馬鹿にされるだろうとも思っていいとどまる。


「雪奈、帰ったわよ。追いかけなよ」


花音は教室から窓の外を見ながら言った。


「好きって、言いなよ」


失う前に、と付け加えた花音に僕は尋ねた。


「どうして花音はそんなに僕に告白させたいの?」

「あんたに後悔してほしくないから」

さあ、行った行ったと僕の背を押す。


「え、ちょっと、花音!」

僕を押す花音の顔は一切見えない。

どんな顔で、どんな気持ちで、今僕の背を押すのか検討がつかない。


「行ってきなさい!」


最後の一押しで廊下に追い出されると、教室の戸はぴしゃりと戸を立てて完全に閉まった。

だから「伊月、好きよ」と呟いた花音の顔も見えなかった。
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