逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 基は例の雨で、スマホを水没させたきりだと言っていた。
 結局、連絡はすべて秘書に行くので、問題ないし、むしろうるさくなくなったと笑っていたくらいである。


(基のバカ……。私が連絡したい場合はどうしたらいいのよ……。)


 沙耶の嫌がることはしないと言いながら、割と強引なところがある基だが、番号を教えて欲しいとは一度も言われていない。


(もしかして、私から教えるのを待ってるとか?)


 こんなことを考えること自体、沙耶は負けたような気がするのだが、その理由を考えると頬が熱を持ち始める。


 最近、ふとした拍子に基のことを思い出すのだ。

 常務室で初めて顔を合わせたあの日から、コーヒーを絨毯にぶちまけられて、呆れ返ったこと。
 エンターテイナーをワルツで踊った、あの夜のこと。

 基の嫉妬から来た侮辱。雨の夜の謝罪。


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