『N』ー忍びで候うー
22.鎮痛剤
翌日、授業が終わってから七花の足は久しぶりに『N』に向かっていた。


店の前で足が止まった。
ここを始めて訪れた日のことが重なる。


だが、看板が出ていないのに気がついた。

鼻とぼやっと感が止まらない。

入り口のドアを押してみた。
「あれ?」
ぴくりともしない。
中は曇り硝子の上、カーテンも降りていて見えない。
「定休日なんて無かったよね、、」

それでも店の前でぶらぶらしていると、突然背後から声が掛かった。
「何をしている。」

一瞬の沈黙。

「授業が終わったから、寄ってみただけ・・」

思わず振り向くのに戸惑う自分がいた。
その声が誰の声だかわかっていたから。
「どうかしたか?」

「え?な、なにが?」
慌てて振り返る。
今日も全身真っ黒の一花がいた。
「久しぶり、、だね。」
一花を見上げると、視線の先にちょうど唇が、、、

慌てて顔を逸らそうとした。
「っくしゅん!」
豪快なくしゃみが出てしまった。

「ごめんなさい、花粉症みたいで、、ずび、」

『もう〜、何やってるの、あたしっ、、』
マスクを押さえる。
恥ずかしくて顔を上げていられない。


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