『N』ー忍びで候うー
次郎は口元をあげて笑みを作った。

「腹立つって顔してるぜ。早く行ってこいよ。」

「次郎、お前、今のわざと」

「はいはいはい、ほんとに」

次郎がぐいっと一花の背中を押した。玄関から押し出す。竹林にさぁぁっと吹き抜けていく風の音が聞こえた。
「お日さまの匂いなんて、言ってもらえて最高じゃん。守ってやれよ。」
ぽんっと肩を叩いた。

「様子を見てくるだけだ。すぐ戻る。」

「ゆっくりしっかり見てきてよ。」

ログハウスから押し出された一花は、一直線に竹林を抜け山を降りていった。





次郎は一花の顔を思い出して苦笑していた。
「案外、かわいい奴なんだな。なんだ、あんなに急いじゃって。」


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