『N』ー忍びで候うー
決して広くはない店内は黄色いざわつきで埋め尽くされていた。
普段見れないほど慌ただしそうな六車を捕まえ、カウンターへと押し込んでいく。

「どういうこと?なんでこんな騒ぎになってるの?」小声で詰め寄った。

「ここのケーキが美味しい、と今口コミで広まっているらしくて。、、ここ数日、女性客が多かったんですが、今朝はオープン前から行列で。この有様なんです。」
六車はげっそりしているように見えた。
「ケーキって、前からあったやつ?何で今更?」
郷太はシンプルなケーキを思い出していた。確か、どこかの店からの仕入れだったような。

「いえ、七花の手作りです。」
「七花の?」
客席から呼ばれ、六車は仕方ないと行ってしまった。


カウンターの七花は生き生きとしていた。
手元の皿には、郷太がここでは見たことのないケーキが載せられるところだった。
『ヤバいな、、』郷太は額に手を置いた。

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