『N』ー忍びで候うー
皿に盛りつけが終わり、七花は壁の時計を見上げた。
『今日も仕込みで帰るの遅くなりそう、、早めにママに連絡しといたほうがいいよね。』



七花は自宅から『N』に通っていた。
あの日、おばあちゃまに呼ばれ家に帰ると、もうすべての話が終わっていた。
あたしはおばあちゃまのお店でアルバイトを始めた、と両親に伝えられてていた。
長かった外泊については、おばあちゃまが孫に会えたうれしさから一緒に過ごしたくてしばらく自分の家に泊めていた、となっていたらしく、事前におばあちゃまからそう連絡を受けていたらしい両親はそんな祖母と孫の関係を嬉しく思い、温かく見守っていたらしい。実際はその祖母に有無を言わさず忍者修行に山に送られていたのだけれど・・・

身体のアザについては服で隠れて見えないので、触れずにおいた。



「ママ?今日も明日のケーキの仕込みで帰りが遅くなりそうなの。うん、大丈夫、ちゃんと帰るから。うん、うん。」
ケーキが人気になり始めてからずっと、七花は準備で家に帰るのが遅くなってきていた。
ほぼ『N』で過ごしているようだった。



ーーーー、
閉店後の店内、普段ないほど疲れきっている六車と郷太は身体をテーブルにもたせ掛けていた。


「七花のケーキ作りの腕はとてもすばらしいです。」
六車の言葉に七花は大変さも吹き飛びそうに嬉しかった。
『やりがい』それだと思えた。

きらきらした七花の瞳に、六車は「言いにくいことですが、、」と続けた。

「七花の配属変更を頭首に依頼します。」
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