暁のプロポーズ
《朝食》

目玉焼き、ソーセージ、鮭に味噌汁。
主食に白米。
──和食なのか、洋食なのか。

そう思いつつも、席に着き手をあわせる。
「いただきます」

もぐもぐと食べる真人をじーーっと見つめる凪。

「真人ってさ。毎回ちゃんといただきます、って言うよね!」

──なんだ?急に。別に普通の事だろう。

「私のお父さんはいただきますって言わないんだよ!
それが普通だと思ってたけど、真人は違うよね」

──あー…確かにそうかも。俺の周りにも外食している時にいきなり食べ始めるのが普通、みたいな感じはあるな。

「礼儀正しい真人…萌える!」

「勝手に萌えんじゃねーよ」

そこは声に出してツッコんだ。

「でも、子供にはちゃんといただきます、って言える子に育てほしいなー」

「!!グフッ…ごほっ」

子供、という言葉に反応してしまった。

「ちょっと?大丈夫?」

「ん…ん。大丈夫だ」

平静を装いつつも、内心焦る。
【そういう行為】はしているが、いきなり【子供】を持ち出されてはびっくりするものだ。

──昨日も…だったしな…

「挨拶ってねぇ…やっぱり大事な事だと思うんだよ」

しみじみ、という言葉が似合いそうな事を言いながら
玄米茶をすする凪。
目が棒線のように細くなり、
ハァー…おいしっ
などと言っているその様は、どこかのおばあちゃんのようである。

「…その他の挨拶はしらねぇけど、多分いただきますは言うようになると思うぞ……」

「…え?なんか言った?」

──聞いてねぇのかよ!

「いや、なんでもない」

──お前の料理に対して《頂く》という誠意のないような無礼な奴には絶対に育てんからな。言わないけど。

「ふーん…ま、いいや!でさでさ!今日お仕事ないなら何する⁉︎」

「…凪は、何したいんだ?」

「えー。私に聞くの?ん〜とね。じゃ、久しぶりにお家でイチャイチャしたいです!」

──あ〜。それ最高だわぁ〜…。

「イチャイチャついでにニャンニャンもしたいです!」

──欲望に忠実だな!本当に!いや、別に嫌なわけじゃないんだけど。

「イチャイチャニャンニャンもいいけど、せっかく休みなんだ。…どこかピクニックでもしないか?」

──せっかくお前がお弁当を作ってくれたんだから。

その言葉を胸にしまい、休みだから、を理由にする。

「うーん。それもそうだね!お弁当あるし!」

──こいつにはやっぱバレているのか。

「さぁーって。さっさと家事を済ませてピクニックでお外ニャンニャンしよっかなー!」

「お外でニャンニャンはいたしません」

そう言い俺はまだ暖かい味噌汁を啜った。



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