たった一度きりの青春は盛りだくさん
「いや、そっか、くらいやったよ。
あ、姫田がプリントもらっとるはず」
そう言われて姫ちゃんの席を見ると、読書に集中している様子。
「うん、ありがと」
お礼を言ってロッカーに鞄を入れて、姫ちゃんの元に向かう。
姫ちゃんは1組で最初にできた友達。
お互いに同じ中学からきた子がクラスにいないってことで意気投合したんだよね。
「ひーめちゃん」
名前を呼ぶと、姫ちゃんは肩をビクッとさせて顔を上げた。
小柄な私が言うのもおかしいけど、姫ちゃんはとにかく小動物みたいで可愛い。
「あ、奈々ちゃん、おはよう」
ゆっくり丁寧に話す姫ちゃんは、まさにお姫様って感じ。
ぶりっこって訳じゃないからみんなに可愛がられてるんだ。
「おはよう。
達川くんから、姫ちゃんがプリントもらってくれとるって聞いて・・・」
そこまで言うと、姫ちゃんは『あ』と机の中からクリアファイルを取り出した。
姫ちゃんの朝課外英語用のファイルだ。
「はい、これ。
あ、私のも持っとく?
答え写さんといかんよね?」
そう言って、自分のと私2人分のプリントを渡してくれた。
「ありがとう。できたら返すね」
姫ちゃんの笑顔に癒されながら席に戻った。