正義の味方に愛された魔女4
9 闇から抜ける
碓井刑事と朝川刑事をのせた車をコテージから少し放れた場所に残して、
龍二は車で藤波と一緒に到着した。


二人が車から降りると、高橋が再び猿ぐつわをされて縛られた百合を抱えて出て来ると、龍二に叫んだ。


「荒川!
他に人を連れて来たら、どうなるかわかってるな、と言ったはずだ!
どうして藤波さんを……」


「お前は他の刑事と一緒に来たら、と言った。
藤波を連れて来るな、とは聞いていない。
百合を離せ!」


「くっそ……夫婦して口の減らない奴らだ」


「おい、高橋!
お前、百合ちゃんに手ぇ出すな、関係ない人間は丁重に扱う事に成っとるだろう?」


「何もしてませんよ。何かされたら面倒なんで動けなくしてるだけです」


「荒川を殺したら次は検察か?
それじゃお前、殺人鬼じゃないか。
思想はどうしたんだ?間違ってないか?」


「藤波さん、俺はこいつと検事の星野のせいで人生を無駄に過ごしたんです。
そうでなければ今頃は藤波さんの所で片腕になって働いて、
美由紀と一緒になって家族で暮らしていたはずなんです」


「家族、か。俺には家族の良さは解らんのだが、人の上に立ちたいなら私欲を押さえないとならんだろう?忘れたのか!

お前はあの時、やりすぎたんだよ。
間違って殺してしまった。だから15年だった。
最初から殺し目的なら20年か、余罪もあったから無期だったかもしれんのだ。

務めを果たして出て来たのなら、これからまた俺のところでやればいいんだよ」


「俺は私欲のためにこいつを殺りたいんじゃありません。
夫婦の恨みを晴らしたいんです」


「それこそ、私欲だろうが!
己の恨みを晴らすことは私欲のかたまりだぞ」


「慎二!私は何も、殺して欲しくなんか無いよ!
あんたと幸せに暮らせれば、それでいいんだよ。
ピストルなんか、捨てちゃってよ」


美由紀さんは、高橋に中に居ろと言われても我慢できなかったんだ。


「自分の女も共犯者にしちまうとか、馬鹿かお前は!
慎二、誰かの犠牲の上になりたつ行為で幸せには成れないんだとよ」


「藤波さん、それは、誰の言葉で?」


「まあ……俺の仲良しの友達がな……。わりと響いたんだけどな、お前にはピンと来んか?

逆恨みを晴らしても心は闇から抜け出せないぞ?」




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