正義の味方に愛された魔女4
「美由紀、お前は中に入ってろ!
荒川!こいつは関係ないんだ。共犯なんかじゃない!」


「何言ってんのよ慎二。今回、百合さんを連れ出したの、あたしだよ?
関係ないのは百合さんだよ!
離してあげてよ」


「お前は無駄に優しくて困るよな……。
荒川!悪いけど邪魔だからこの女から殺るわ」


高橋は私にピストルを突きつけた。
同時に龍二が拳銃を高橋に向ける。

でも高橋は私を殺す気なんか少しもなくて、
美由紀さんのこともなるべく巻き込みたくない。

どうするべきか、迷っているんだ…。

窓から辰彦さんが見えたとき、私に再び猿ぐつわをさせながら思っていた。

《藤波さんがいるならこの女も荒川も殺れないじゃねぇか…。
思想は正しい。俺が間違ってるのか?》


さっきから、腕を縛っているロープが少しずつ少しずつ、ゆるんできている…。


もう少しで抜けそうだと思った時、拳銃を持った高橋の手を、美由紀さんが両手で掴みあげて言った。


「慎二、諦めよう?さっき藤波さんがいってたじゃない?
誰かの犠牲の上になりたつ行為で幸せには成れないよ。
昔あんたが殺したあのろくでなしにだってさ、生きてて欲しいと思っていた人が居たかも知れないじゃない?
荒川を殺せば百合さんが…百合さんを殺せば荒川がさぁ……」


やった……腕が抜けた!猿ぐつわをずらして叫んだ。

「龍二!!」


ちょうどその時、高橋と美由紀さんの背後から二人の刑事が走り寄って確保した。






「百合ー!百合っ!どこか怪我してないか?痛いところはないか?
朝川、碓井さん、連絡頼むわ」


「了解。
藤波さん、二人と一緒に戻る?
それとも、うちらと五人で乗ってく?
一応七人乗れるけど?」


「……高橋と一緒に乗せてくれや…。
この二人と一緒ってのは勘弁してくれ」


龍二が私を抱きしめて離さないんだもんね……。


「百合さん、いいタイミングでロープ外れましたね。
それも魔女の力で?」


「碓井さん、そこまでファンタジーじゃないでしょ。たまたま重なったの。助かりました。朝川さんも、ありがとうございます」



「龍二、心配かけてごめんね?
でもあの人、私に何かする気なんて初めから無かったよ?大丈夫。どこも痛くないよ。ありがとう」


「……そうか?……いや、心がな、百合の心が傷ついたはずだ。
また例によって、危ない目に遭いながら相手の事を色々と気に病んでいたんだろう?」


「それは、さ……うちに帰ってから龍二に治してもらうからさ、大丈夫でしょ」


《百合……良かったよ、何もされてなくて。
もう、縄つけて連れて歩くかな……》


「い、犬じゃないんだから……。
はい、撤収撤収!
あ、一人で歩けるよ?大丈夫、大丈夫」


お姫様抱っこをしようとするのを、なんとか阻止したのだった……。









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