セシル ~恋する木星~


「まだドキドキしてる」
歩道橋を上り切って、やっとセシルが口を開いた。

「セシィ、可愛いな」
セシルの弱い部分を知り尽くしているかのように、山口は耳元で囁く。

「いやん」

「好きだよ、セシィ」

「……」

「セシィ」

耳元に熱い息が吹きかけられるたびに、セシルのからだの力はどんどん抜けていった。
もう言葉も出てこない。



< 104 / 201 >

この作品をシェア

pagetop