セシル ~恋する木星~
「でも、ほんと子どもがいるなんて、とても思えないよね」
「よかった」
気になっていたことを直接言われて、セシルはほっとした。
「実はね、今日、やっぱり子持ちのおばさんだったんだって、山口さんに思われないか気にしてたんです」
「どうして?」
「だって、旅先ではずっとひとりだったし、日常なんて見えないけど、今日は思い切り日常から出てきたわけだから」
「そんなこと、気にしてたの? あなたは、あなたなのに」
「うん」
セシルは少しぬるくなったアールグレイを、ゆっくり噛みしめるように一口飲んだ。