浅葱の桜



「今日も怪しい動きはないっちゅう感じかな。そしたら帰るで」



日もとっぷり沈んで少し肌寒く感じる風が流れる。


ゆっくりと歩いていく山崎さんの後ろを付いていきながら私たちは帰路へと着いた。





「ああ、おかえり。山崎に…………誰だ?」


玄関を抜けた後にばったりと出くわしてしまった彼。


黒髪に、病的なくらい白い肌。身長はあまり高くないようだけど、しっかりとした体格。


長い前髪からのぞく灰色の瞳がやけに印象的だった。


その姿は沖田さんとも、土方さんとも、そして永倉さんたちとも違った。


ということは私が初めて見る人なわけで。



「ああ。斎藤は聞いとらんかったんか。中々会う機会もなかったからな。こいつは桜庭佐久。新入りや」



『斎藤』?


その名前、どこかで聞いたような……。


昨日、山崎さんに説明してもらった沖田さんたち以外の幹部の中に……?


ええと、もう少しで思い出せそうな気がする。


斎藤…………。



「そうか。俺は斎藤一」



ああ、斎藤一! 三番組組長の。


ようやく思い出した。



「なんや、今日は稽古日やったんか?」

「いや……。今日は非番だが」

「だったらなんでそんな格好しとんのや」



山崎さんがそういうのも無理はないのかな?


斎藤さんが着ているのは道着と呼ばれるもので。


非番のようには見えない……きがする。



「…………そういう気分だった」




その一言で済ませた斎藤さんは黙ってお辞儀をすると黙って去って行ってしまった。



「ま、斎藤はああ言うやっちゃな。佐久のことが気に入らん訳じゃないやろ」

「そ、そうなんですか?」



や、山崎さんが言うなら……そう、なのかな?


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