浅葱の桜
「ひめさま……?」
「ん?」
「ききはずっとひめさまの傍におります!」
急な宣言に思わず持たされていた扇を落とす。
慌てて拾うとその手を童女に……ききに包まれた。
まだ幼くて、小さな手。
それでも痛いくらいに込められた力は私を想ってくれている事がありありと伝わって。
「……どうして、急に?」
「だって、ひめさま。寂しそうなおかおをしていたから。だからわたしがずっとそばにいます!」
見開かれた琥珀の瞳は強い決意の光が宿っていた。
私、馬鹿だなぁ。
こんな、私の半分も生きてないききに励まされるなんて。
「ありがとう。きき」
頭を撫でるとくすぐったそうにしながら笑っていた。
自分で決めた事だ。
味方がいるとは思えないこの屋敷の中でもききが居てくれるなら。
そう思うだけで少しだけ心が軽くなった。