『それは、大人の事情。』【完】

オーダーした大好物のツナとバジルのパスタが運ばれてくるまでの間、真司さんと同棲を始め彼の娘とも一緒に暮らす事になったと佑月に話した。


「ちょっと待って。娘って何?」


佑月が驚くのは当然だ。私だって、知らされた時は戸惑ったもの……


不機嫌になった佑月に更に詳しく事情を説明すると、呆れた顔でため息を付く。


「ねぇ、それって詐欺じゃん。梢恵さぁ、部長にいいように利用されてるんじゃない?」

「利用?何それ?」

「だってそうじゃない。勝手に娘を引き取って梢恵に世話させてるんでしょ?娘を引き取る為に梢恵と同棲したんじゃないかって思っちゃうよ」

「そんな……真司さんはそんな人じゃない。それに、同棲の話しが出たのは、沙織ちゃんを引き取るって決まる前だよ!」


ムキになって否定する私に、まだ何か言いたげな表情を見せる佑月。でも諦めたのか、運ばれてきたツナとバジルのパスタを自分の前に引き寄せボソッと呟く。


「梢恵が納得してるならいいけど……」

「そうだよ。私が納得してるからいいの!」


キッパリ言い切ったのは、自分に言い聞かせる為でもあった。


「でもさ、幼稚園の夏休みまでって言っても、よく部長の元奥さん納得したよね。私なら短期間でも離婚した夫に娘を渡したりしないけどなぁ~」

「うん、私も初めはそう思ったよ。専務も怒って電話してきてたしね。でも、沙織ちゃん本人の希望だって分かったら専務も納得したって真司さんが言ってた」


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