『それは、大人の事情。』【完】
✤ 危険な白昼夢


真っ青な空に湧き上がる真っ白な入道雲。朝のニュースで、今年一番の暑さになると言ってた今日は、大安吉日。佑月の結婚式の日だ。


厳粛な空気が漂うチャペルで、純白のウエディングドレスを身に纏った佑月が長いベールを引き、私の横を通り過ぎて行く。その姿はまるで、舞い降りた天使の様に可憐で美しく、私の知ってる佑月じゃないみたい。


式は滞りなく淡々と進んでいく。そして、誓いのキスを終えた佑月の目に光るモノを見た瞬間、私まで泣きそうになった。


「おめでとう……佑月。本当におめでとう。幸せになってね」


何度もそう呟いていたら、隣の真司さんが私の腰に手をまわし「俺達も、もうすぐだな」って優しく微笑む。


「―――そうだね」


あれから真司さんが結婚式場に勤める知り合いに聞いたところ、九月末の土曜日にキャンセルがあったそうで、取りあえず予約を入れておいたと言っていた。


もう、後二ヶ月弱で私も佑月と同じ純白のウエディングドレスを着て、真司さんの元に嫁ぐんだ……


ずっと憧れていた結婚。もちろん嬉しかった。でも……まだ私の心の中には、薄いブルーの瞳の彼が居た。どうしても吹っ切れない想いがあったんだ。


真司さん、ごめんなさい。撮影旅行まで、それまで許して。撮影旅行が終われば全て忘れる。白石蓮への想いも必ず断ち切る。だから……お願い。


絶対に十字架の前で偽りの誓いはしないと心に決め、修と見つめ合う佑月に拍手を送り続けた。


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