唇トラップ

昨夜の後味 _ 12





や、

や、

八坂、さん…?!




眞「なんで廣井さんだけ二課なの?!ずるいよ!!」

廣「やさか?」

眞「八坂蒼甫!“社内史上最高の男”ですよ!!
知らないわけない!元人事部のくせに!」


廣「…ああ〜!
って、お前本っ当にミーハーな奴だな〜。」



心底ゲンナリした、ゲロゲロ顔の廣井さんに、眞子は構わず捲したてる。



眞「私なんて、毎年“海営二課”に異動希望出しててもちっとも通らないのに!怒」


廣「邪な心が透けて見えてんだよ。」






ちょいちょいちょい…
どうやら廣井さんも、八坂さんのこと知ってるってこと?
あの人そんなに有名人なの??

どっちに、しても。

話変えたい。汗





『…ひ、廣井さん、次何頼みます?』


ああ、と顔を上げた廣井さんの腕を。眞子は、シンプルなフレンチネイルの指先でがっちり捕らえて逃がさない。




眞「紹介して!ていうか飲み会して、八坂さんと!!」

廣「はぁ?!」

眞「私だって“最高の男”とお近づきになりたい!」

廣「知らねぇよ、勝手に近づけよ。」

眞「無理なの!いろいろ手を尽くしたけど、八坂さんってガードくそ堅いの!涙」




い、いろいろ手を尽くしてたんだ…。汗

ていうか、八坂さんって。そんなに人気あるんだ。




『八坂さんって、何がそんなに凄いの?』



思わず、興味本位が漏れてしまった。
よくぞ聞いてくれたとばりに、鼻穴膨らませていく眞子と。お前までそっちにつくのかと、がっくり肩を落とす廣井さん。
二人が対照的に映ったところで________







エ「なんの話してんの?」



王子様が戻って来た。脇を抜ける瞬間、ふわんと鼻先を掠めたエリーの香り。
この香り、ちょっと好きだったりする。



エ「須藤の声、トイレまで聞こえてんだけど。笑
誰を紹介してって?」



いやけどエリーはやばい!!!
私絶対挙動不審になっちゃうし!

八坂さんの話は聞かれたくない…!



『エリー、そういえ』

廣「がっくん王子!!」



0.1秒の僅差で、廣井さんがエリーの注目を先取した。




エ「はい?笑
うわ、それめっちゃ懐かしーわ。」

眞「がっくん王子…あったね〜、そんなの!」


眞子も思わず、廣井さんがブッ込んだ単語に気を取られる。


廣「な?須藤、お前らにはがっくん王子という同期の宝がいるんだから。
がっくん王子とお近づきになるのだって大変なんだろ?」


眞「エリーのことは、今さら王子なんて思えないもん…」




王子じゃないし、と笑いながら。
エリーは、えらくエリーにばかり注文を取りに来る若い女の子の店員に、コロナを2本追加した。





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