唇トラップ


牧さんが、怒鳴る?

あの紳士代表のような人が??


しかも、相手は柊介?
同じ取引先を相手にしたこともある、旧知の仲だったはず。



『嘘でしょ・・・。』


想像を絶する。
一体、いま会議室で何が起こってるの?


“とにかくさ、これからバンバン声かけられるかもだけど、もうこれは遅かれ早かれ分かったことだからさ!
他人なんて勝手にトヤカク言う生き物なんだから、いちいち気にしないで適当に流しなさいよ?”

『どうしよう・・・。』

“私もフォローするから。とにかく、今日がヤマだと思うから夕方まではがんばって。”

『ヤマって・・・。汗』

“まぁ、もうこれは、”



背後で、沸き立つ黄色い声が聞こえた気がした。



“王者と付き合ってしまった者の宿命だね。”




王者?

ぼんやり繰り返す頭の中を、先輩の声が引き戻す。




「藤澤さん!た、大変!!」

“じゃあ、私仕事戻るからね!また!”



そういえば眞子は何でこんな情報を知ってるの?


『待っ、』


そう思い付いたのに、内線は既に切れた後だった。




「藤澤さんってば!!」

『あ、はいっ、』



会議室から、眞子に速報を送った人がいる。

エリー??
でもエリーだったら、直接私に喚起してくれそうな・・・



首を傾げながら、振り返った、そこには。





『・・・・・・!!』






悲喜こもごもの表情を見せる先輩陣の中で。

高々と中央に掲げられる社内誌「SUN!」。
待ちに待った本年度のイケダンランキング特集ページでは。





『嘘でしょ・・・。』




本年度の王者として見開きを飾る、柊介の姿があった。
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