椿 バージョン1
出会い
私が準備でバタバタしているとき

「俺はもう行くけど。
姉さんは後からくる?」

帝が私に聞いてくる。

あーもう!
こうなったら頼るしかない!

「お願い!帝!」

私が答えたのを聞いてから。

「わかった。
言い訳しといてあげる。
任せてよ」

帝は嬉しそうにふっと笑った。


「行ってきます。姉さん」


行ってらっしゃい。
普通に言いたいけど、ダメだなこれは。


帝は優しい。
優しいが、優しすぎる。
何だろうか。シスコン?
帝は弟というより、保護者みたいだ。

そして、私は今、帝の心配性を気にしてる。

私と一緒にいるせいで、いつまでも彼女が出来ないんじゃない?

まぁ、帝は絶賛片想い中だ。
それは仕方ないことかもしれない。


「あれ?姉さん。
行ってらっしゃいって言ってくれないの?」

「ッ!」

だからなんなの?
毎日のそう言うやりとりは。
必要ないじゃん!

バカップルでもあるまいし。

私が必死に格闘していたら、

「言ってくれないの?」

帝が少し寂しそうな顔をする。


昔からその表情には、弱いんだよね。


「はいはい。行ってらっしゃい」

結局言ってしまう私も、相当なブラコンだ。

バタンと音をたてて閉まったドアを見ながら、そんなことを考えていた。
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