柴犬~相澤くんの物語り
 それから気分を変えるために彼に明るく話しかけた。

 「あっ、そうそう、いつも高宮さんにおやつもらってばっかだから、今日は俺が用意したんだ」

 そういうと俺は、骨の形をした歯がためみたいな固いおやつを彼に差し出した。

 「これ、俺がいつも食ってるやつ、噛めば噛むほど味が出る」

 「い、いいんですかぁ?! うわぁ、ありがとうございますぅ! すっごく嬉しいですぅ」

 それから二匹でガジガジ骨を噛った。

 「結構うまいだろ?」

 「ハイッ! すっごくおいしいです。不思議な味のする食べ物ですけど相澤君からのプレゼントだからそれだけで満足です」



高宮さんは、どんな些細なことでも喜んでくれる。
それが結構心地いい。
楽しそうな高宮さんを見てたら、さっきの、ございますおばさんの話題を思い出した。



 「なあ……もし俺たち会えなくなったらどうする?」

 ちょっと真面目な顔で、彼を見つめた。



 「な、なんで急にそんな悲しい事…考えられない……」

 うなだれた彼の頬から涙がポロポロこぼれ落ちる。



 「えっ? あれっ?」

 突然泣きだされてビックリした。

「あ、あの、別に会いたくないっていう意味じゃないんだ。俺もずっとこうしていたいんだ、本当だよ」

 必死になだめる。


 「本当? も、もう意地悪言わない? ずっと会ってくれる? 私の事嫌いになったりしない?」


 「えっ? う、うん。もう意地悪言わないし、ずっと会うし嫌いにならないよ」

(高宮さん、確認するの好きだなあ……)

ちょっと溜息をつきながら答えた。  
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