アリストの3姉妹

2.砂漠の旅.2

『私達が幸せであればあるほど、“あの方”は私達を狂おしいほど妬み苦しむ』
『“あの方”の恨しみ妬みの声が強いほど、私達はあなたの声を聞き取る事ができる』
『さあ、私達は熱くて辛い砂漠の旅でも、楽しく歌いましょう』
『きっと“あの方”は、狂おしく私達を憎み、その声が私達の元へ届くはず』
『その声は、“あの方”のいる位置を示す鍵』
『ええ、歌いましょう!そして、憎しみの声で私達を呼んで』

3人は順にアリアを歌った。楽しげに。

『お姉様、素敵だわ。心が洗われるような歌声』
『フフフ。有難う』
『では次は私の番よ』

暑さは厳しく、砂の地面は足を捕らえ歩きにくく
体力の消耗は普段の生活に比べ早いけれど・・・
王様が持たせて下さった干し肉は山ほど持ち歩いていたし・・・
熱く乾いた砂漠で歌って、喉が渇けば、蜂蜜のように甘いロッティの乳が喉を潤してくれた。

過酷な筈の砂漠の旅は、孤独な一人旅ではないせいか、3人で笑ってさえいれば思っていたほど、辛いものではないと感じていた。
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