きみと恋の話をしよう
「あのさ」


佐橋先輩が眉をひそめた顔で私を見つめる。


「さっきから、俺へのフォローすごいけど、同情ならホントやめてくれる?俺が言いたいのは、黙っててほしいってだけだからさ」


「黙ってますよ!あと、同情じゃないです」


またしても訂正して、佐橋先輩の顔を見つめ返す。せっかく話してくれたんだから、誠意で返さなきゃ。


「私、本に関する仕事につきたいんです。漠然としてますが。本を読むのも大好きです。だから、ジャンルは関係なく、本が好きな人とは仲良くなりたいと思ってます」


佐橋先輩の眉間からしわがとれた。
わずかに表情がゆるむ。


「毎週、お小遣いをやりくりして本を買いにくる佐橋先輩は、本当に本が好きなんですよね。わざわざ変装までして。そんな熱意のある人が学校の先輩だったんですもん。何かしたいって思ったら変ですか?」


佐橋先輩が立ち上がった。
表情はすっかり変わっていて、それはいつもの爽やかで優しげな王子様の顔だった。

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