不倫のルール
母が高校生の時に、父と出会った。

母が通学の為に乗っていたバスに、傘を忘れて降りてしまった。

その傘を母に渡そうと、自分が降りるバス停でもなかったのに、バスを降りてしまった父。

父に声をかけられ、傘を手渡された時、母は恋に落ちた。『一目惚れ』てヤツだ。

父もそうだったらしいから、二人にとってそれは、『運命の出逢い』だったのだろう。

父は母よりも八才年上で、広い心で母を優しく包みながら、愛を育てていったそうだ。

……恥ずかしい……自分の両親のそんな話を聞くのは、ものすごく恥ずかしい……

私の恥ずかしい気持ちなんか関係なく、嬉しそうに、幸せそうに話す母。

そんな母を見て、結局私も、温かい気持ちになってしまうんだけど。

母の短大卒業を待って結婚した二人。

母の希望と父の考えで、正社員として就職した母。

結婚に就職……慣れない生活に一生懸命な母を、家事を手伝ったり、母の話をじっくり聞く事などで、父は支えてくれたそうだ。

母が二十三才の時に、私が産まれる。

それまでと変わらず、いや、それまで以上に、家事・育児を手伝った父。

「あんまり幸せだったから、神様に嫉妬されちゃったのかな……」

寂しそうに笑った母……

自動車事故で、父と突然の別れを迎えるのは、それから数年後だった。

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