不倫のルール
「黒崎課長の奥さんは、専務の娘だよ。あのスピード出世も、そうなんだろうって。まっ、あの人、人当たりはいいから、はっきりと言う社員はいないけど」

玲子さんは、黒崎課長の事をよく思っていない。『うさんくさい笑顔の下で、何を考えているのかわからない』というのが、玲子さんの黒崎課長の評価だ。

「だから、絶対に離婚しないよ。黒崎課長は」

少し語気を強めて言った玲子さん。

私は小さく頷いた。

「黒崎課長と結婚したいとか、そんな事一ミリも思ってない。『もっと早く出会っていれば』なんて事も言わない。“奥さんも子どももいる”黒崎課長に惹かれたんだから….…」

一気に言うと短く息を吐き、言葉を続けた。

「私は、わずかな時間でもいいから、一緒にいたい。一人の“女”として、黒崎課長の傍にいたい……!」

想いを込めて、美冬と玲子さんを交互に見た。

自分の考えとか思いを通す事を、私は慣れていない。でも、精いっぱい私の“想い”を、玲子さんと美冬に伝えようと思った。

「あの夜、自分の気持ちに気付いてしまった。お酒の力はあったけど、私は一度も黒崎課長に抵抗しなかった。それよりも、溢れてくる想いにどうしようもなかったの」

膝の上の手を、ギュッ!と強く握った。

「一度は、自分の想いに蓋をしたはずだった。でも、もう溢れてた……私は、黒崎課長への自分の想いで、溺れそうだった!」

泣くまい!と思っていたのに、涙が一筋、頬を伝った。

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