川に流るる紅い毛の…
子狐様豊穣伝説ー村の章

異世界伝説


子狐が目を開けると、風鈴の音がころころと耳を掠めた。子狐は目をきょとんとして耳をピクピクと僅かに震わせ、ここは何処なのか把握しようと頭を振る。

「…全ての行動が愛しいのお…」


和やかな雰囲気はこの低い声によって張り詰めた空気へと変えた。声の元を辿ると、小川で子狐が助けた老人である。

老人は手元にある湯呑に入ってあるウーロン茶を飲むと子狐の傍に寄り、子狐の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
何かした覚えのない子狐に、老人は小川でのことのお礼を伝えた。
子狐は小川でのことを思い出し、ニコリと微笑んだ。

「ところで子狐の坊や、なぜあの木の実を持っていたのじゃ?」

子狐はなぜわざわざそんなことを聞くのかと思った。老人は落ち着いた様子で語った。
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