ねぇ、聞いて
春1
風が吹くと太陽に照らされた大きな桜の木から桜の花びらがヒラヒラと落ちていく。
風に合わせて少し宙を舞い、そして地面に落ちる。
散ってしまった花びらはどうなるのだろう?
歩く人々に踏まれ、靴の泥にまみれて、どこに消えてゆくんだろう?
さっきまで桜が綺麗と言ってた人達も、散っている花びらを頑張って掴もうとしている小学生も、落ちた桜には見向きもしない。

「まーりっ!」
「きゃっ!」

突然誰かに後ろから肩を叩かれてびっくりした私は小さく悲鳴を上げた。
後ろを振り返ると小学校からの親友、前田愛子(まえだあいこ)が子供のようにニカッと笑って私を見ていた。

「おはよ!」
「おはよう、愛子」
「何ボーッとしてたの?入学式遅れちゃうよ」

そうだった。
今日は、南堂高校の入学式。

「まぁ、茉莉がぼーっとしてるのはいつもの事だもんね!ほらほら、行こ!」 
「なによ!いつもの事って」
「いーから!急がないと遅刻しちゃう!」

愛子は私の手を握り走りだした。
元陸上部の愛子は足がすごく早い。
私は転けそうになりながらなんとかもつれそうになる足を動かした。
5分ほど走ると南堂高校が見えてきた。

「ハァ…ハァ…苦し…」
「茉莉は運動不足だね」

肩で呼吸をする私と反対に愛子はケロリとした様子で笑っている。

「あ!あそこにクラス表があるよ!見に行こ!」
「ちょっ…ちょっと待って…」
「えーと…あ、あった!あたしはC組だ!茉莉は?」
「A組」
「うそ?!離れちゃった……」
「しょうがないよ」

明らかに肩を落とす愛子。私もちょっと残念。

「茉莉!ちゃんとクラスで友達作らなきゃだめだよ!」
「別に友達なんていらないよ」
「そう言うと思った…。休み時間は会いに行くから!」
「うん。私も行くから」

私達は新品の上履きを履きそれぞれの教室に向かった。

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