初恋フォルティッシモ
オーボエ~雨と指輪~

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傘を閉じて、ATMの前に立つ。

今日は、日曜日。

これからユリナと、約束のデートだ。


だけど今日は、少しだけデートに行きたくなかったりもする。

その理由は…



『でもその代わり、日曜にはたっかい指輪買ってね!ピンクのダイヤモンドがついてるやつ!』



「……はぁ。指輪って、いったいいくらすんだよ」



この前、同窓会が終わってやっと帰って来た俺に、ユリナがそう言ったからだ。

今すぐ逢いたいとか言われたけれど俺は疲れて死にそうだったし、断ったらそんなことを言われた。


でも…まぁ、一応カワイイ彼女のためだし。

結局こうやってお金を下ろしに来てるんだけどね。


とりあえず貯めておいたバイト代を数万くらい下ろすと、俺はまた傘を開いてユリナとの待ち合わせ場所に向かう。


今日は、あいにくの雨。

天気予報だと、朝から夜まで一日中雨らしい。


…こんなことなら家デートの方がよくね?


そんなことを思いながらしばらく歩くと、俺はやがて待ち合わせ場所である駅の西口に到着した。

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