初恋フォルティッシモ
…………
その後マンションに帰って一息吐いていると、玄関でインターホンが鳴った。
出てみるとやっぱりその主は渡辺部長で、渡辺部長はあたしを見るなり呟くように言う。
「…今にも泣きそうな顔だな」
「だって、」
「まぁ話を聞こう」
…あれから、あたしは電車の中で数十分どう過ごしていたのか記憶にない。
それくらい三島くんとのことが衝撃的で…っていうか、そもそも今日再会できたことが一番の衝撃なのに。
冷静に考えてみると、それなのに早速告白しちゃうあたし…何者。
渡辺部長は居間のソファーに座ると、キッチンでお茶を用意するあたしに言う。
「ああ、気を遣わなくていいよ」
「でも仕事帰りだし、きっとご飯すらもまだなんじゃ…」
「まぁね。でもそれは、ちゃんと家内が用意して待っているから」
気にしなくていい。
渡辺部長はそう言うと、あたしに向かって「おいで」と手招きをする。
隣に腰を下ろして、「早速呼び出してすみません」と謝ったら、「だから言ったろ?」と自慢げに笑われた。
「今日再会出来たからって、全てが上手くいくとは限らないんだよ」
「いや、あたしだってそんなふうには…思ってませんでしたけど」
「で、どうなの彼?今朝経理部に君と一緒に挨拶しに来た男がそうだろ?彼女でもいたのか?」
「ハイ、まぁ……そんなところです」
「…そうか…」
……ほんと、情けない。
弱すぎる自分に嫌気がさす。
あたしが思わずうつ向くと、渡辺部長はあたしの頭を優しく撫でてきた。