初恋フォルティッシモ

そのまま一階に下りた時、俺は暗闇だけの廊下に入って、今度は俺と麻妃先輩が二人きりになった。

行きたい場所なんてなく、何故かただ、二人になりたくて…。

だけどさすがに真っ暗闇に入ると、麻妃先輩が半ば強引に俺から手を離した。



「っ、離してよって!」

「!」

「もう何!?せっかく居残り練習してたのに!何で邪魔するのっ、」



麻妃先輩はそう言うと、俺から少し後退って離れる。

…暗闇でも、声だけでわかる。

麻妃先輩が、怒った顔をしてんのが。

でも俺はまだ、何も言えない。



「こんな急に来て、こういうことされたら誰だってビックリするでしょ!

何かあるんならその場で口で言えばいいのに!」


「…」


「今、いいとこなの!青田くん、頑張ってるんだから!」



そして麻妃先輩はそう言うと、俺に背を向けてすぐに音楽室に戻ろうとするけれど…



「…!?」



俺はまたその手を掴むと、その手を引いて…後ろから麻妃先輩を、勢いよく抱きしめた。
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