初恋フォルティッシモ

麻妃先輩はそう言うと、俺の顔を覗き込みながら首を傾げる。


…図星。


って、いやいや怒ってねぇし!普通だし!

何でいきなしそうなんだよ!


俺は麻妃先輩のそんな言葉に、内心はイライラしながらそれを隠して言った。



「べ、別に。全っ然怒ってねぇし」

「そうかなぁ?」

「そうっすよ。これのどこが怒ってんすか」

「いや、なんとなく…雰囲気が」



……なんか、ゴメン。


麻妃先輩は勝手にそう決めつけると、俺の背中にそう謝ってくる。

いや、先輩がそうやって謝ってくるとか。


とりあえず、落ち着け。

落ち着け…俺。


俺はそうやって静かに心の中で言い聞かせると、必死の笑顔で麻妃先輩に言う。



「なに謝ってんすか、先輩らしくないっすよ」

「…」

「それより、そのCD買わないんすか?買わないならもう店出ますよー」

「え、あっ…待って!すぐ買ってくるからっ」

「……」



俺のそんな言葉に麻妃先輩は慌てたようにそう言うと、すぐさまCDを持ってレジに向かって行った。



…あの時、俺は確かに“嫉妬”していた。

嫉妬ができるくらい、麻妃先輩を俺のものにしたかったのかもしれない。

だけどあの頃、俺はもう既にとんでもない思い違いをしていたんだ…。
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