スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
弱くて格好悪い自分を
見ないように、見せないように。

いつも強がり、虚勢を張って
誰の前でもそうやって生きてきたのに


ある日ひょっこり現れたヒナに
心に着込んだ偽りの服を
一枚、一枚剥ぎ取られて


最後に残ったペラペラの俺ですら、彼女は何度も救ってくれた。
形のない未来に足がすくむ度、希望ばっかり見せられた。


「……」


ヒナが眠るソファの端に座り、そっと頭を撫でる。
柔らかな髪が指の隙間から零れ落ちた。


俺が俺でいるために。

手放すのは夢か、

それとも



「……ごめんな。」



彼女との
最後の夜が、更けていく。
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