スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
春木さんの口から零れたナイフみたいな言葉たちに
私の心はズタズタに引き裂かれていく。



「俺がニューヨークから戻るまで二週間ある。それまでに事務所の荷物片付けて、鍵はポストに入れといて」



春木さんはそう言うと、私に背を向けた。
ドアノブを掴んだまま一瞬だけ足を止める。



「……岳の所に行ってもいいし、地元に帰ってもいい。俺の知った事じゃない」



閉ざされた扉の向こうで
だんだん遠ざかる、足音。
< 206 / 333 >

この作品をシェア

pagetop