スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
私が彼にとって特別な存在になれた事。


未だに信じられなくて、醒めない夢の真ん中に放り出されたような気分になるけれど。


「お嬢さん、可愛いわよぉ。ね?春木くん!」

「ん?……うん」


わざとらしいくらい素っ気ない素振りは、彼なりの照れ隠しだとすぐにわかって
またひとつ、好きなところが増えてしまった。



『誰にも見せたくない。』



そう言った春木さんの耳まで真っ赤に染まった顔を
私は生涯忘れないだろう。




あの瞬間に胸を満たした想いの事を
手に余るほどの幸福感を

きっと愛なんて呼ぶのだろう。
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