世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
色を奪う。

その意味を、私は理解できなかった。


「分かっていたんだろう?颯太」


青柳颯太は俯いたまま口を開かない。


「...お前にとってこの事態は、恐れていたことだろう?」


男はそう言って青柳颯太の頭を掴み、無理矢理天馬の姿を見せた。

天馬は苦しそうに胸を押さえ、私達を睨み付けている。
いつまた殴りかかってくるか分からない。
まるで、猛獣のよう。
見るものすべてに襲いかかり、何かを壊していくような。

そんな危うさが、今の天馬にはあった。


「颯太。お前はこのお嬢さんに惚れているんだろう」

「...うる、さい」

「このお嬢さんに、天馬と同じ苦痛を与えたくないだろう?」


青柳颯太は苦しそうに天馬と私を見つめている。


「...教えてください。色を奪うって、どういう意味なんですか」


青柳颯太が恐れていること。
それが分からないままでは、青柳颯太のことも救えない。

そんな思いでそう聞くと、男は軽く笑いながら話し始めた。
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