世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
振り返ると、そこには男が立っていた。

私はその男を見て、天馬を守ろうと手を伸ばす。


「はは、安心しなお嬢さん。俺は天馬を壊したりしないよ。それに、天馬はもう壊せない」

「壊せない?」

「あぁ。俺にももう、天馬は人間にしか見えなくなった。...天馬、俺はもう人造人間の研究は止めることにする。お前みたいに、苦しんで生きる存在を生み出すのは、もう御免だ」


男の言葉に、天馬は微笑んだ。


「そうですね。人造人間を造り続けることはオススメしません。ただ一つ、言っておくとすれば...そうですね、俺を生み出してくれて、ありがとうございます」


天馬は深々と、男に頭を下げた。


「...俺は今、幸せですよ。生まれてきてよかったと、心から思います」


天馬の表情は、前よりもずっと生き生きとしていた。


「...天馬、颯太。いつでもそこのお嬢さんと遊びに来なさい。今度はマスターとしてではなく、父親としてお前らを迎え入れよう」

「...分かりました、父さん」

「...仕方ねぇな。俺にとって父親はお前だけだし...じゃあな、父さん」


この男の人は悪い人じゃない。
きっと天馬を人造人間として見ていなかった時だってあったはずだ。
青柳颯太を、本当の息子のように育てていたはずだ。

本当に、不器用な親子だなぁ、と笑みが零れる。


「その時は改めて、お嬢さんのことを紹介してくれよ。彼女として、かな?」

「任せてください」


顔が火照る。


「ま、任せてって...!」


顔が熱くて、鼓動が速くなって、焦ってしまう。
そんな私を見て、3人は笑っていた。

その姿は、本当に家族のようだと思った。
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