世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「えっ...」


誘ってくるというのも意外だった。

でも、それよりも。
坂瀬くんに、関わらないように言ってきた青柳颯太から私達を近づけるのが、不思議だった。


「まぁ、天馬と遊佐がいいとしても、白河がどう言うかだけどな」

「...俺はいいよ」


坂瀬くんは私の顔色をうかがいながらそう言った。


「私も、いいよ」

「じゃあ遊佐。白河に聞いといてくれ」

「うん」

「じゃあ俺、自分の席に行くから。またな」

「おう、また」

「うん。またね」


坂瀬くんが席に戻って行った後、私は青柳颯太の方を見る。


「どういうつもり?」

「何がだよ」

「何がって...なんで坂瀬くんに近づけようとすんの?」


私の言葉に、青柳颯太は呆れた表情をした。


「言っただろ」

「えっ、何を」

「...お前を傷付けるのは間違ってたって」


昨日の言葉を思い出した。

そう言えば、そう言われた。
あの時は熱に浮かされてたからだって思ってたのに。

あまりにも優しい表情で、優しい声で言われたから、私は反応できなかった。


「...熱のせいじゃなかったの」

「熱があっても言ったのは俺なんだし。つかなんだよその反応。馬鹿みたいな呆け面」

「な、なんなの!ほんっとムカつくヤツ!」

「はは、お前らしい反応になったな。なんつーの、ギャンギャン騒ぐ犬、みたいな」

「うるさい!」


拗ねたふりをして席に着く。

優しい言動に惑わされる。

悪いヤツじゃない、いいヤツ。

それ以上の、何か。

青柳颯太の存在が、私の中で変わってしまいそうだった。
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