イレカワリ
「違う。違うんだよ、マホ」


「どういう事?」


「心を入れ替える事ができるのは、歩だけじゃなく、海もだったんだ」


「え……?」


あたしは驚いて純を見た。


写真で見た海の顔を思い出す。


海は歩の双子だ。


2人に同じ能力が備わっていたとしても、不思議ではない。


「海は入れ替わりの能力を使い、いろんな人を困らせたり、今回みたいに金を稼いだりしていたんだ。それを止めていたのが歩だった」


「え……?」


あたしは純を見つめた。


歩は海の悪行を止めていた?


それなら、なぜ人の体を使って売春なんて……?


「海は歩から散々説教を受けて、歩の事をうっとうしいと感じていた。だから、歩が風呂へ入っている時を見計らってナイフを持って忍び込んだんだ」


「まさか、海は歩を殺そうとしていたの?」


あたしの言葉に純は大きく頷いた。


「その通りだ。だけど浴槽の水で足滑らせた海はナイフを誤って自分の腕に付き刺してしまったんだ」


「それって事故じゃない!!」


あたしは声を上げてそう言った。


海の死は自殺でも他殺でもない、事故だったんだ。


「あぁ。だけど元々正義感の強かった歩はそうは捕らえなかった。海の死は自分のせいだと思い込んでいたんだ。


俺は、そんな歩に付け込んだんだ。最低だよな、俺って……」


純はそう言い、うつむいた。


あたしはそんな純の手を握りしめた。


「ううん。今の話、ちゃんと聞けてよかったよ」


あたしはそう言い、ほほ笑んだ。


そんなに優しい歩なら、きっとこれから立ち直ることもできるだろう。
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