イレカワリ
写真
簡単にお風呂に入ったあたしは、すぐに自室へと戻った。


歩の髪の毛はあたしより短いから、髪を乾かす時間も短縮できて好都合だ。


部屋に入ったあたしはスマホを確認した。


《海? 誰の事?》


そんな短いメールが送られてきている。


歩は海というに人を知らない。


やっぱり、歩の記憶からその人の事は抜け落ちているのかもしれない。


あるいは、大きな事故にあってその前後の記憶がないとか、そういうことかもしれない。


あたしは考えながら、整理整頓された部屋を見回した。


人の部屋を物色するのは申し訳ないと思い、机の中を見たことは今まで一度もない。


あたしは恐る恐る勉強机に近づいて、その引き出しを開けた。


引き出しの中には今までの課題や使い終わった教科書などが、綺麗に入れられている。


その様子にホッと胸をなで下ろすあたし。


歩の秘密を勝手に暴いているような気持ちになり、あまり気分はよくない。


だけど、歩の事はもっと知りたかった。


歩が忘れているという海についてのヒントがあればと思ったのだ。
< 58 / 125 >

この作品をシェア

pagetop