イレカワリ
あの日
歩の事も純の事もわからない。


お弁当を食べ終えたあたしはそそくさと教室へ戻り、歩の姿を探した。


歩はカレンと一緒にお弁当を広げて、楽しそうに会話を弾ませている。


すぐに歩と話がしたい。


その気持ちをグッと押し殺して自分の席に座った。


今日の放課後は純と2人で海のお墓まいりに行く。


純の言っていた『あの日』という意味がわからないまま一緒に行動すれば、きっとボロを出してしまうだろう。


そうなる前に、歩に『あの日』がなんなのかを聞いておくべきだった。


「歩」


そう呼ばれた事に一瞬気が付かなかった。


あたしはハッと我に返り、視線をそちらへ向ける。


高瀬が不思議そうな顔をしてあたしを見ていた。


その手にはゲーム機が握られている。


「あぁ……高瀬か」


あたしはホッとしてほほ笑んだ。


「このゲームの攻略法を教えてほしいんだけど」


高瀬はそう言い、ゲーム画面を見せて来た。


画面上にはあたしが見たこともないゲームが映し出されていて、あたしは首を傾げた。


「このゲーム昨年販売されたヤツなんだ。ずっと買わずにいたんだけど、歩が面白いって言ってたから昨日思い切って買ったんだよ」


高瀬の言葉にあたしは「あぁ~そうなんだ」と、曖昧に頷いた。

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