Double Cool
 互いに夢にも爆進して、支えあって、唯一無二のパートナーと認め合っているのに、互いが足枷になってしまうことを心配して前へと進めていなかった。


 …焦ってるわけじゃない。だけど。


 今年美澄は29才になる。


 そして、2年先輩の修司は31才に。


 記者として脂にのり出した一方、狭い日本社会、周囲の女性たちは次々に片付いて、それでも他の職種よりは遥かに実力主義的なところがあったからまだマシだったが、美澄とて年頃の女、焦りがないわけじゃない。


 …修司、何も言ってくれないけど。


 そう思う傍ら、心のどこかでホッとしている自分もある。


 結婚しても、自分の人生にほとんど変化のない男性とは違って、女性にはさまざまなリスクやデメリットが付きまとう。


 一方的にそう思うのこそ、男尊女卑の一種ではあるのかもしれなかったけれど、苗字一つとってもそうだ。




 『…江島くん、君のステップアップに繋がることは間違いない。3年、あるいは5年になるか。君を見込んで、あちらの編集長から、ぜひ、君をフランス支社に欲しいと打診があったんだよ』




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