恋するBread*それでもキミが好き
20時。なんとか仕事に区切りがつき、急いで冷蔵庫に入っている袋を取り出して、休憩室へ向かった。


深呼吸をして袋からパンを出したとき、休憩室のドアが開いた。

匂いを嗅ぎ付けてきたのか……。

「もう逃げられませんよ」

犯人を追い詰めた刑事のような台詞に、俺の中にあった緊張感がフッと途切れた。


「分かった分かった後で話すから、とりあえずこれ食べ終わるまで静かに待ってろ」

「マジですか?分かりました!静かに待ってます」

微動だにせず、じっと俺の隣に座っている藤村を横目に、気持ちを切り替えて再びパンを見た。


まず目についたのは、艶のある濃いオレンジ色。

少し眺めた後、ゆっくり口の中へと運んだ。

サクッとした食感の後、柔らかい感触と柿の甘さが口の中に広がり、最後にさつまいもの皮も入っているのだろうか、甘さの中にほんのりほろ苦さを感じた。

思わず笑ってしまうほど……。

「美味しい……」


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