恋するBread*それでもキミが好き
「久しぶり」

細身のジーンズに白いシャツ、昔より少し痩せたような気がする。

「ああ久しぶり。でも、なんで」

「たまたま近くを通ったから……」

街灯の下、風で長い髪がなびいた。

「……っていうのは嘘。今さら嘘をつく必要なんてないものね」

フッと笑ったその顔を見て、別れた日に見せた笑顔が脳裏を過る。

「会いたかったから……会いに来たの」

「え?」

付き合ってる時には見たことがない表情で俺を見つめた。


「今さらって思うかもしれないけど……あの日言ったこと、あれは全部嘘だったの」

「嘘……って?」

ハッキリと言わない話し方に、なんのことだか分からない俺は戸惑う。

「幼馴染みとのこと、あれは嘘よ。あなたの気を引きたかっただけ」

一瞬頭の中が混乱したが、柚希が何を言いたいのかすぐに理解した。

一年前、俺たちが別れるきっかけになった柚希の言葉。


『同窓会で久しぶりに田舎に帰ったとき、幼馴染みと再会して、それで……』


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