片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
披露宴のメニューはフレンチのフルコース。


「敦司様、お疲れさまでした」

冬也は伊集院様のグラスの瓶ビールを注いだ。

「冬也君こそ、これからが大変だぞ。私達は君達の後見役だ。困った時は遠慮なく相談しなさい」


伊集院様が冬也のグラスに瓶ビールを注ぎ返した。


私は目の前に出された前菜をパクパク口に運ぶ。


「夏芽お前…全然緊張感ないな・・・」

「冬也も食べなさい。美味しいわよ」

「大勢の人が居ると言うのに、緊張しないとはなかなか肝の据わった奥様だな。冬也君」


「コイツは単に自分の置かれている立場を理解していないだけです」

「これから嫌と言う程理解する。それでいいじゃないか・・・」

「そうそう。緑川家に嫁いでからが大変。覚悟はしていた方がいいわよ。夏芽さん」

「陽那様もそうだったんですか?」


「そりゃ、あの政治家の名家の伊集院家だったから・・・何も分からない私をしっかりと敦司さんがフォローしてくれたから・・・ここまでやって来れたと思うわ。敦司さんには感謝しています」


伊集院様は頬を染めて何も言わずグラスのビールを飲んだ。





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