片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「あ、お久しぶりです。お義父さん」

副社長は慌てて笑顔を貼り付けて、吸いかけの煙草を携帯用の灰皿に押し込んだ。


「お手洗いに行ってただけですよ。直ぐに戻ります」


「・・・君がこの私を避けてる理由は孫のコトか?」

「・・・お義父さんだって・・・孫欲しいでしょ?」

「拓真君と小陽よりも後に結婚した稜真君と奈那子さんの間に子供が生まれた。焦るキモチは分かるが、子供は授かり物だ。仕方がない。こればかりはどうしようもないと思っている・・・」


「俺は小陽の元に戻ります」

副社長は敦司様の言葉を最後まで訊かず、ホールに戻って行った。

「冬也君は早くお色直し行きなさい」

「あ、はい」

「君の栄えある門出だと言うのに、拓真君の愚痴を訊いてくれて感謝するよ」
敦司様に副社長と話をする機会を作ってくれないかと頼まれたが、結局色々と忙しくて機会を作るコトが出来なかった。
しかし、非常に気まずい雰囲気になってしまった。

「いえ・・・副社長も副社長なりに子供のコトは悩んでいて」

「私は娘から不妊の原因は自分にあると訊いている。拓真君には申し訳ないと思っているんだ」


小陽さんは実の父親の敦司様には不妊の原因は自分にあると嘘を付いているんだ。
夫である副社長を気遣っているのか。

「拓真君は濱部家の長男だし、『星凛堂』の次期社長。後継者問題は避けて通れない。しかし、子供だけは・・・」


言葉を濁す敦司様の表情は苦悶に満ちていた。







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