片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「すまない。夏芽。全部俺のせいだ・・・」


冬也は自嘲的になって私に謝った。

「謝られても困るわ・・・」

私は社長室への直訴を断念して、三枝部長の言葉を受け入れてデスクに戻った。


「緑川さん、旦那様の主任と痴話喧嘩ですか?」


廊下で私達の様子を見ていた同僚の片山さんが問いかける。


「別に・・・」


「社内で喧嘩するほど仲いいんですね・・・」

「そう言うワケじゃない」

社内では犬猿のいや龍と虎の私達が結婚する。
社内中が驚きに湧いた。


―――――あれからもう4ヵ月。






私は華道の家元・氷見流緑川派の次期家元となる冬也と結婚した。


その事実が私の回りの世界を変えたんだ。


伝統とか誇りとかには無縁の普通の世界で育った一般人の私。


その世界の変化に付いて行けない・・・


自分の全部を犠牲にして、冬也をスキだと言うキモチだけで彼の元に嫁いだけど、愛のない新婚生活で、私の失ったモノはとてつもなく大きかった。

今更、気づくなんて私は馬鹿だ。大馬鹿だーーー・・・






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