片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
近所の感じの良いパスタ専門店で早めのランチ。


「夏芽さんはお休みだったんですか・・・てっきり、一緒に出社されたのかと思っていました。でしたら、一度夏芽さんに連絡して、自宅にお届けした方が良かったですね」


「いえ、構いませんよ」


俺はボンゴレ、小陽さんは海老のクリームパスタをオーダーした。


「本当に今朝から緑川さんには申し訳ないコトばかりして」

小陽さんは自身を責めて頭を下げる。

彼女が頭を下げたのと同時に頬に長い黒髪が揺れ、俺の鼓動はドキッと跳ね上がった。
楚々とした雰囲気の中に見える媚びない色気が小陽さんの魅力。
男なら誰でも引き寄せられてしまう甘美な美しい花の香りが漂うんだ。
新井さんの言う通り彼女は無意識に男を誘っている。



「小陽さんが悪いワケじゃないし。気にしてませんよ。でも、新井さんは今でも拓真さんに未練があるんでしょうね。本当に拓真さんは罪な人だ」


「拓真さんをそんな風に言わないで下さい」

小陽さんは向きに怒る。
こんな綺麗な女性に心から愛されるなんてどんな心地がするんだろう。



「緑川…さん?」


「拓真さんが羨ましい」

でも、俺は小陽さんに愛されたいとは思っていない。俺が興味のあるのは夏芽だけ。
俺は夏芽に小陽さんのように自分を一途に愛して欲しいと願っている。



「緑川さんは夏芽さんのコト本気で愛しているんですか?」

「俺達はお互いにワケありで結婚したんです。夏芽には星苑さんと言う恋人が居る」

「星苑さんですか・・・その人は・・・星苑さんは人間じゃありませんよ。調べてみれば分かります」

星苑さんは人間じゃない!?何者だ?
「彼は弁護士なんですよね」

「はい」

小陽さんはそれ以上何も教えてくれなかった。




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