片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「冬也、ここに居たのか?父さんはお前と3人で話がしたいそうだ」

「俺と3人?」


「行っておいで。冬也君」


「はい」


俺は腰を上げて、父さんと再び爺ちゃんの病室に向かう。



「冬也を連れて来ましたよ。父さん」


「冬也、こっちに来い」


俺達は爺ちゃんのベットの歩み寄る。


「次期家元の話だが…お前ではなく、奈都也に継がせようと思う」


「えっ!?でも、父さん・・・『フラワーアーティスト』としての仕事が・・・」


「フランスの治安が余り良くなくて・・・」


年末に起こったパリでのテロ事件が脳裏を過る。


「これからは、日本を拠点に活動する予定だ。俺が家元になっても、色々とお前には世話を掛けるかもしれないが、『緑川派』を分裂させたのは元はと言えば、この俺だ」


「父さん・・・」


「冬也、愚かな父親に償いの機会を与えてくれないか?」


幸せな家庭を想像して、父さんと母さんは結婚したが、俺と引き換えに母さんを失った。
一人になった父さんは夏芽の母親と恋に落ちた。そして、二人の間には颯が産まれた。

「俺は父さんを愚かだとは思っていない。母さんを奪った俺を許して欲しい」

自分の出生を知り、俺が母さんを死なせた。父さんに代って家元を継ぐ。それが俺の償いだと思い、今日まで次期家元として努力を重ねた。


俺が夏芽を失って味わっている今の喪失感。母さんを失った父さんのキモチと同じだと思う。
俺も一人じゃ立っていられない誰かに縋りたいと思っている。

人は弱い生き物だ。



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