片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
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4月---・・・


春だと言うのに庭の桜の蕾はまだ固く、暁の風はまだ冷たかった。


俺と父さんは爺ちゃんがいつも居た離れで花を生ける。


俺とお父さんが花材に選んだのは庭に咲くハナミズキだった。

「同じだな」


「そうだね」


爺ちゃんが亡き後、父さんが家元を継いだが、先代の家元の意向でも反対する者は去った。
笹沼様もその一人で、彼女は分派を立ち上げた。


ハナミズキはアメリカでは最も愛される花の一つで、日本がワシントンに桜を贈ったお返しに贈られた花らしい。

白く小さな可愛い花がひしめき合いながら咲いている。

「俺は『緑川派』を守った父さんに対しての礼のキモチを込めて、ハナミズキを選んだ」


ハナミズキの花言葉の中の『返礼』にちなんで選んだようだ。


「俺は夏芽と生まれて来る子供と仲良くいつまでも暮らせるように祈りを込めて選んだ」


俺は『永続性』と言う意味でハナミズキを選んだ。




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